次の時代の価値観。チックコリアの最後のメッセージを読んで思うこと。

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偉大なジャズピアニストが亡くなった。

常に最先端を走り続ける新しい試みをしてきた音楽家に多くの感動とインスピレーションをもらった。

そのピアニストからの最後のメッセージにも時代の先をいく言葉があったのでこれについて今日は対話したいと思う。

チックコリアの最後のメッセージは公式Facebookページでみれるが、一部下記に引用した。

“I want to thank all of those along my journey who have helped keep the music fires burning bright. It is my hope that those who have an inkling to play, write, perform or otherwise, do so. If not for yourself then for the rest of us. It’s not only that the world needs more artists, it’s also just a lot of fun.
(公式Facebookより一部引用)

◇

50〜60年代に出てきたジャズのスタイル「ハードバップ」を聴きまくってた学生の頃、1968年に発売されたチックコリアの2枚目のアルバムにぶっ飛んだ。

「なんだ、この演奏は」

それまで聴いたことの無いフレーズ、アプローチ、リズムの使い方。

分析すると、和音に当てはまる音階を、通常使われる第一候補を使わず、第二候補の音階をわざと当てはめてサウンドに微妙な外しを与えているる。

マッコイ・タイナーの奏法から発展させたのでは無いかと思われるその発想を当時は理解できなかった。

ディキシーランドジャズ、スウィング、ビバップ、ハードバップと進化してきたジャズが、また一つ扉を開いた。

と思いきや、70年代に入りロックやシンセサウンドをジャズとクロスオーバーさせるサウンドが始まり出したその頃、チックコリアはリターン・トゥ・フォーエバーという、ラテン音楽にジャズとエレクトリックピアノを混ぜた美しくスマートなサウンドを作り上げる。トップレベルの優秀なミュージシャンたちと。

エレクトリック、アコースティックの両方で活躍出来る人はそう多くはない。

が、そのどちらも股をかけるのが天才たる所以なのだろうか。

以前に何かで聞いた事がある。本当かわからないが、リターン・トゥ・フォーエバーは一般の人に受け入れられるサウンドを考えて使ったものだと。

これが本当なら彼はマーケットインを有言実行でやってみせたことになる。

その真偽はともかくその後、23回ものグラミー賞を獲得したことを考えれば、それができたとしても不思議ではない。

常に時代の先端にいたのだ、時代の空気を感じとって。

◇

そんな時代の空気を読み、先端を走った彼の最後のメッセージには全ての業種に通じるこれからの価値観の行方が記されているように感じる。

「曲を書きたい、演奏したいと思っている人はそうしてほしいと思う。アーティストが世の中に必要ということではなく、音楽はただ楽しいものなのだから」(めっちゃ意訳)

僕はこのメッセージを「もし何かをやりたいと思っている人がいるなら、それをやって欲しい。それはあなたにとってきっとただただ楽しい事であるから」と解釈している。

テレビという理想の完璧な中の技術や感性の天才たちに熱狂していた中で、YouTubeでは誰もが身に纏う雰囲気のうちの親近感を研ぎ澄ませた天才たちが現れたように、インスタ映えの理想の演出の側で熱狂を遂げた人々が次に目を引くのは、「その人が何をどれだけただ単に楽しんでいるか、何が好きなのか」というその人の非演出の熱量。

インスタ映え疲れをしている人は多い反面、そのインスタ映えの後ろに写っているその人が使っているプライベートのものには関心が高い。

音楽で先端を長きに渡り走ってきた彼は、時代がどのような流れで動いていくかをしっかりと感じ取っていたのではないかと思う。

ジャズをやろう、音楽をやったほうが良い、といってるわけではない。

好きを仕事にしよう、稼げる方法を紹介しているわけでもない。

あなたの人生であなたがやりたいと思ったことがあるなら、それをやってほしい、そう願っている。それはあなたをきっと楽しくさせるものだからと。

この優しいメッセージはチックコリアの音楽とともに僕の印象に残った言葉。

今日も自分がやりたいと思っていることをやってみたいと思う。

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